Webサービスを選択する 6つのステップ
どうすれば、数あるWebサービスから最適なものを選べるのか?
ビジネスをしている人なら、ほぼすべての人が「Webサービス」を使っているでしょう。例えば、メールや問い合わせフォームから始まり、メール配信、名刺管理、領収書作成などなど。
現代のビジネスと、ビジネス向けWebサービス(アプリ)は、切っても切り離せない関係にあります。
そして、「同じことを実現できるツールが、山ほどある」状況で、
- どんな基準で
- どうやって
どのツールにすれば良いかについて、今日は書きたいと思います。
すべて自社開発だった私がWebサービスに頼るようになった経緯
工期が20分の1、コストは100分の1、機能は増加
私はソフトウェア開発会社を経営していました。その頃は、
- 顧客管理システム
- メール配信システム
- 問い合わせフォーム
- 会員サイト
- 決済(クレジット & 銀行振込)
など、ビジネスで必要なシステムをほぼ自社で作成していました。私もプログラマーであり、システム設計、UI/UXの設計も担当していたので、
- ビジネスモデルを、どうやってシステムにするのか?
- どんな機能が必要で、どんな業務フローにするのか?
- 顧客の購入体験は、どうするか?
他社のサービスを使うよりも、自分たちで作ったほうが「便利」だし「安い」し、「価値が高い」と思っていました。
実際、その通りでした。
ところが・・・
新規事業で問題発生
起業してから数年後、今行っている toiee Lab という新規事業をスタートさせました。メンバーは、全員、プログラミングはわからない、どちらかといえば、ITがニガテなメンバーでした。
そして何よりも問題なのは、toiee Lab が「どんなサービスをすべきか?」が決まりませんでした。ワークショップを開くのか、フランチャインズをするのか、オンラインの講座を展開するのか、ビデオを無料公開して広告収入するのか・・・
「ビジネスモデルが確定していない」
この状況で、開発リソースがあるからといって、「開発チームに、システム開発を依頼」してしまいました。
通常の業務の合間に、勉強を兼ねてシステムを作ってくれたのですが、作っている間にビジネスモデルが変更になるということが、何度も発生しました。
「その機能はもう必要ない。それよりこっちを」
「この機能は、市場テストするから急務なのに・・・
後回しになってるぞ」
などのやりとりが続いた後、ハッとしました。
新規立ち上げ時こそ、Webサービスを使う
数年前、起業した時を思い出しました。
その当時は、ソフトウェアを作ることが最優先で、ビジネスモデルのためのシステムを「自分で開発はしていません」。他のWebサービスを組み合わせて、自分のビジネスをシステム化していました。
現在は、当時よりも、ビジネスに使えるWebサービスが「便利」「安い」「高機能」で、選択肢も非常に多いです。
「Webサービスを活用しない手はない!」
そう考えて、様々なWebサービスを試しました。例えば、会員サイトとして「Shopify + MailChimp + HelpScout」を使って、高度な顧客管理を実現してみたり・・・何十というサービスを使ってみました。
そして、ビジネスモデル、サービスの変更に伴って、違うWebサービスに乗り換えたりしながら、今は落ち着いて、 Teachable、Mailerlite、Strikingly、Medium を中心に使っています。
前置きが長くなりましたが、以上のような経緯から「どうすれば、自分にぴったりのWebサービスを選ぶことができるか?」について、以下に説明します。
なお、参考文献は、「経営者の条件の『意思決定』 — P.F.ドラッカー」です。ドラッカーの指摘している「意思決定のプロセス」を参考に、まとめました。
Step0. 様々なWebサービスを知る
意思決定をする前に、詳細はわからなくても、様々なWebサービスの存在を知っておくことは有用です。例えば、以下のような感じです。
メール配信
- MailChimp
- Awebar
- Mailerlite
- Gumroad
デジタルコンテンツ販売
- Gumroad
- Stores.jp
- note
オンラインコース
- Udemy
- Teachable
イベント
- Doorkeeper
- Peatix
- Eventbrite
ヘルプデスク
- Google Apps を工夫して
- Respose (Twitterで)
- Zendesk
- help scout
Webサイト
- Medium
- Strikingly
- WordPress.com
- Jimdo, Wix
- Webflow
などなど。本当にたくさんあります。いろんな方が、まとめていたりするので、記事をざっと読んで知っておくと良いでしょう。
Step1. 解決したい課題、実現したいことをリストアップ
Webサービスを選ぶ前に、自分の要望や課題をリストアップしましょう。
あとで「正しい妥協」をするので、気にせず、ああだこうだ、たくさんリストアップしましょう。
Step2. 目的の明確化
多くの仕事は「本当のところは、何を実現できれば良いのか?」と考えれば、驚くほど効率がアップしたりします。
事例)
ある企業の方が、システムの相談に来ました。話を聞いていると、すごく壮大な計画を持っており、その実現のために私の会社のソフトを組み合わせて出来ないか?という相談でした。そこで
「本当のところ、今必要なシステムはなんですか?」
「そのシステムが今目の前に現れたら、何が改善するのですか?」と聞いてみたところ、答えは
「いやいや、いるんです。将来的に」と答えるので、
「将来的にですよね。まだ必要ないということですよね?
本当のところ、何が実現できたらいいのですか?」
「単に講師の方と、情報が素早く共有できたらいいのではないですか?」「それなら、Evernoteでノートブックを共有すれば手っ取り早いですよ」
こんなやりとりをして、あっさり解決しました。システムは売れませんでしたが、喜んで帰ってくれました。
つまり、「課題」「要望」を眺めて、 「要するに、何ができたらいいのか?」 を問うことが必要です。そうすることで、「目的が明確に」なります。答えは、とてもシンプルなものになることが多いです。
例えば、
- 顧客が、情報を知れればいい ・・・ メール送信で十分
などです。
Step3 正しい妥協をする
目的が明確になったら、やるべきことを「思いっきり」減らすことが可能になります。特にビジネスが小さく、シンプルな間は、「思い切って、割り切ること」が大切です。
顧客の目的は「あなたの提供する価値」であって、「システムがいいから」という理由ではものを買いません。
大手企業で、どの商品を買っても同じ(コモディティ)なら、「買い物の体験がいい」ことが優先されたり、ポイントがやたら付く方がいいとかで選ばれます。
こんなパワーゲームと付き合う必要はなく、「唯一の価値」を提供し、そのために必要十分なシステムがあればOKのはずです。
- 絶対に満たすべきことは何か?
- あれば十分なのものは何か?
を考えて、システムに求めるものを妥協しましょう。
例えば、アフィリエイトはほとんどのビジネスで不要です。そもそも売れ筋商品にでもならない限り、アフィリエイトなど誰もしません。もっと販売してから、検討すれば良いでしょう(その頃は、外注できるはずです)。
Step4 試作品を作る
なすべきことがわかり、満たすべき条件がわかり、正しく妥協できそうなら、「まずは、試作品」を作りましょう。使うWebサービスを決定し、体験版などに申し込みして、「仮の商品を登録」して、
- 顧客として体験テスト
- 業務フローの体験テスト
を行います。
ここで重要なことは、上記の2つのテストを行うことです。顧客体験はよくても、実際は業務フローが大混乱することがあります。逆に、顧客体験が悪すぎて、購入の仕方がわからなくて、混乱を与えて、サポートを増やすということもあります。
とはいえ、大概のWebサービスは、顧客体験はしっかり作り込まれています。なぜなら、大量の顧客を抱え、ベストプラクティス(良い事例)の研究をしているはずなので。
デザインセンス(見た目や装飾ではなく)が、本当に良いサービスは数が少ないです。使っていて、サクサク使えるようなシステムは、良いデザインができている証拠です。おそらく、業務フローもやりやすいでしょう
業務フローをチェックするときに、自分以外の人への「教育ができるか?」も検討しましょう。あまりにも難しいと、IT苦手な人がミスを連発する可能性があります。
顧客体験すべきこと、業務フローでチェックすべきものをリストアップして、シミュレーションしてみましょう。
この時、よくあるのが
- 「思った以上に、機能が充実していた」
- 「すごくいい機能で、ビジネスアイデアが思いついた」
というポジティブな結果と、
- 「思ったよりできることが少なかった」
- 「難しかった」
というネガティブな結果です。
ポジティブな結果は望ましいように思いますが、ついついアイデアに飛びついて、肝心の「目的」を忘れて、システムを作ることが中心になることがあるので、注意しましょう。
逆に、ネガティブな結果の場合は、「なんでもシステムでやらず、多少はアナログの発想で」対応することで、解決することが多々あります。例えば、銀行振込は、多くの決済システムでは対応していません(海外のものは)。
その場合は、
- 別のフォームを用意する
- 自動返信で振込先を伝えて、振り込んだら連絡をもらう
- 連絡をもらったら「無料登録クーポン」を発行して購入してもらう
とすれば解決します。
Step6 いつまで使うか?を決める
さて正しい妥協ができるようになるためにも、試作品を作って「実際のシステムを目の当たり」にした後は、「いつまで、このシステムを使うか?」を決めましょう。
たとえば、
- どれぐらいの規模になったら、独自システムにするのか?
- 他のシステムに移行するときの目安は?
などを決めておきましょう。
そうやって、最終的には、メモ帳などに
- 期待する結果
- チェックする日時
を記入して、その日になったら、この意思決定(システムを選ぶこと)の有効性を検証しましょう。期待する結果と、実際の結果を比較すれば、多くの学べます。
まとめ
Webサービスを使えば、ひと昔前なら「数百万円」もかかっていたことが、リスク0からスタートでます。
例えば、Mailerlite というメール配信サービスは、1,000リストになるまでは、無料で使えます。他にも、Gumroad はメール配信、自動メール(ステップメール)、サポートシステム、スマホアプリなどにも対応しています。
使わないのは損です。
いろいろ探求をしてみましょう。
クリニックシートで分析しよう!
とは、言われても、ステップは分かったものの、何から始めたらいいのか混乱しませんか?
そこで、上記のステップを一枚にまとめた「クリニックシート」を作りました。
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