Markdown のススメ

思考力、文章力、生産性の向上ができます

この文章を書いている最中、撮影しました 人類の歴史を振り返れば、多大な影響を与えた発明といえば、「火」や「言語」と言われている。 最近流行の「サピエンス全史」によれば、人類のみが持つフィクションを信じる特性を利用し、「多くの人が信じられるフィクション(正義、民主主義、倫理など)」の発明が偉大な発明、発見にノミネートされる。 しかし、個人的に「小さいけど偉大だ」と思う、活版印刷以前からある発明は、 だと思う。 そして、コンピュータが現れ、文書アプリが現れてしばらくし、私たちの「文章を作る生産性」を下げてきた。その生産性の低下を食い止めるだけでなく、生産性を向上させるののが「Markdown」だと思う。 今日は、そんな側面からMarkdownについて説明し、考察し、具体的な活用方法、ハウツーを紹介したいと思います。

メタ情報を「スタイルする」発明

歴史

活版印刷によって、情報の劣化を避けて、はるか遠く、場合によっては遥か遠い時間を超えて、情報を伝達できるようになった。 それに対し、「見出し」「強調」「箇条書き」「空白」というシンプルな装飾であり、メタ情報の発明は、その情報を読む個人の時間を削減し、伝達する密度を高めることに大いに役立った。つまり、 がもたらされた。これらは、デジタルになり、さらに加速化されていると言える。例えば、「アイキャッチ」として使われる画像(Mediumは、アイキャッチを入れるようにアドバイスしてくる)など、進化はしているが基本は同じである。

具体例

ここまでの文章を「単一の文章で表す」と、以下のようになる。もちろん、非常に判読しづらい。
ここまで読んできた文章と比較していただければ、すぐにわかるだろう。見出しや、空白の設計が情報伝達において、重要な役割を果たしていることが分かる。

用語の整理

ここで用語を整理したい。 まず、見た目に現れる「文字の大きさ」「太さ」「色」「フォント形状」は、日本語では装飾という。英語では、デコレーションという。このデコレーションにルールを持たせると、スタイルと言って良いと思う。 そして、「見出し」「強調」「画像幅」「画像に影をつける、つけない」「文字の大きさ」「見出しと本文の文字色のコントラスト」「段落間のスペース」「文字の大きさの比率」などを、情報を的確に伝達できるように、スタイルを決定する作業が「デザイン」である。 個人的には、文字の大きさではなく「比率に注意して設計」されているWebサイトとかを見ると、感動する。素晴らしい!と思う。単純に見出しサイズを並べていくと、例えば対数比率になっていると、「おぉ、アートだ」と感動したりする。 簡単な図で表すと、以下の通り。

アウトラインの発明

ここまでは「情報伝達」としての文字について書いてきた。一方で文字は「思考の道具」としても使われてきた。その思考の道具としての文字の大きな転換は「アウトライン」の発明だと思う。 アウトラインとは「外の線」ということから、日本語では「全体の構成」を表す。 箇条書きと、インデント(字下げ)を使った「アウトライン」にって、情報を構造化することは、科学や論理と相性が良く「アウトラインを作ることで、思考する」ことは、研究者や論文を書く人だけでなく、知識が武器となる仕事に携わる人なら、誰もが使っている技術である。 情報伝達としての文字が、思考の道具としての文字に変わる瞬間と言える。 具体例は以下の通り 箇条書きによって、アウトラインを作り、このアウトラインを自由に作り変えることで、素早く文章の構成、論理をまとめ上げることができる。先に全体像を作り上げることで、部分を作りやすくなり、文章の質、論理構成が高まる。 アウトライン、アウトラインで考える技術が発明されていなければ、論理構成、良い文章を書くこと自体は「才能」や「天性の才能」とされていたかも知れない。この技術が発明され、教育が整備されたからこそ、「論理的な文章をかくこと」は、学べるものになった。
ところで、これほど重要なアウトラインという技術は、一般教育で教えられていない。大学生のほとんどが、アウトラインで文章を構成したり、論理を構成することを知らない。今後、解決していく必要があると思われる(toiee Labで取り組むべきである)

アウトラインとコンピュータ

このアウトラインで考えるとき、何度も書き直し、構成し直すには「紙」では不便である。そこで便利に使えるものが「テキストエディタ」や「ワープロ」である。 今では、アウトラインプロセッサという専用のアプリも、多々ある。 タイピングをマスターし、アウトラインをコンピューター上で自由に作成できるようになれば、コンピュータは思考の道具となってくれる。

アウトラインとマインドマップ

ところで、トニーブザン氏が中心となって生み出された「マインドマップ」は、このアウトラインの再構成を紙でやりやすくしてくれる。 アウトラインを縦につくるのではなく、放射状に伸ばすことで、自由に空間を使える発想は素晴らしいと思う。大学院生の時に、たまたま知って感動した。 もともと、紙で考えるほうが好きだったため、マインドマップを知って「パソコンでアウトラインを作る」ことから、「紙上で、マインドマップを使ってアウトラインを作る」に切り替えた。 博士論文を執筆したときは(約300ページ)、模造紙で大きなマインドマップを書いて、細かく分割して、そこに線や校正を書き込んでアウトラインを作り込んだ記憶がある。おかげで、締め切りの2ヶ月前には完成した。

マインドマップとコンピューター

ところで、パソコン上でマインドマップを作るソフトがいくつかある。例えば、前述のトニーブザン氏が代表を務めるチームが開発している iMindmap や、 MindNode、MindMeister など、様々ある。 かなりの数を試してみたが、最終的には「iMindmap」を使ってきた。 毎年、使わない機能を追加し、アップデートする古いソフトウェアビジネスをしている点がきになるが(もっとシンプルで使い心地にこだわって欲しいと個人的には思う)、情報デザインの観点から、最もみやすいマインドマップが作れる。 毎年、アップデートを購入してきた iMindmap だが、今年からは一切購入しなくなった。会社でも、今後の購入は行わない方針である。理由は、テクノロジの進化にある。 Mindmapは社外で使うことはなく、社内の情報伝達や思考の道具として使う。この時、紙とペンで作成したものが、最も読みやすく、変更しやすく、伝わりやすい。しかも、即作れるし、場所を選ばない。 今では、iPad Proが紙の役割をするし、iPhoneがスキャナの役割をする。 最近は、iPad Proのノートのスケッチ機能でMindmapを作り、それをシェアして使うなどしはじめ、iMindmapは使わなくなった。

ワードが生産性を下げる

ところで、活版印刷の延長だったテクノロジが、パソコンと印刷機とワープロアプリによって大幅な進化が起った。ところが、ワープロソフトがたくさんの機能を持ち始めた結果、生産性を引き下げるようになった。 もともと、社内の情報伝達は「口頭」や「手書きのメモ」など簡単な資料だった。それが誰もがワープロアプリを扱えるようになって、ワープロアプリで見た目を整え印刷するようになった。 ところが、インターネットとともに社内の情報伝達方法が大きく変わり、直接ファイルをやりとりするようになった。 その結果、単なる情報ですら「ワープロアプリ」を開く必要が出てきた。もちろん、面倒であるため、メールにシンプルなマークなどをつけて、「ワープロの代わり」をするようになった。 ワープロアプリが担ってきた情報伝達が、「簡単な装飾」と「メール」に置き換えられ、今では「社内チャットシステム」に置き換わりつつある。 依然として「情報を伝えやすくする、スタイルリング」にこだわっているアプリは少ないように思う。

Webサイト作成アプリが生産性を下げる

上記のような変化の中、Webサイト、ブログが急速に広まり、個人でも情報発信するようになった。個人が手軽に自分でWebサイトを立ち上げるために、様々なシステム、アプリが開発された。 ところが、多くのアプリが「ビジュアルエディタ (WYSIWYGエディタ)」を採用しているだけでなく、ビジュアルエディタが旧世代のワープロアプリと同じである。文字の大きさを、自由に設定できる代わり、スタイルを設計する機能は弱い。 その結果、情報デザインができていない、読みづらいページが大量に増えているように思う。有名ブログサービスなのでは、 ======= や、絵文字などを駆使して、なんとか読みやすく工夫しているようだが、これがマルチデバイス環境では、読みずらさを助長してしまっている。 個人的には、WordPressのビジュアルエディタ は使わないようが良いと思っている。それよりは、後述するMarkdownで作成するべきだと考える。 そのほうが、 と良いことがたくさんある。

中間まとめ & Medium は素晴らしい

徒然なるままに書いてしまったため、話の焦点がボケてしまった。ここまでの要点をまとめると、以下の通りである。 そして、生産性という観点で文章周辺のテクノロジをみると となります。 ここまで書いてきて、あたらためて思うことは「Mediumは、よくデザインされている」ことです。 Mediumは、使える装飾が極端に少ないです。見出しは、大見出しと中見出しの二つしか作れません。その結果、この制限の中で思考することになり、それが内容を吟味する余地が生まれます。

Markdown とは?

WordPressや、Webサイト作成ソフト、ワープロソフト、HTMLなどが肥大化する中、もっとシンプルに、もっと必要最低限で「軽くて、手に馴染む」良い情報デザインの方法はないか?と考える人たちがいました。 その中で「Markdown」が生まれました。 HTMLなどのことを Markup言語と言います。Mark(マークする) up(上、つまり機能を追加する)ということで、様々なマーク(タグと呼ばれるもの

)を駆使して、多くの用途に使えるように整備されています。 この Markup に対して、 down つまり「減らす」ものが、Markdown です。ネーミングも秀逸で、多くの人が「もともと使っていた」ルールを整理したため、一気に広まりました。 具体的には、以下の通りです。
見出しは # を使い、箇条書きは — を使うなどします。これで装飾をしていく書き方を Markdown と言います。 この Markdown で書かれた文章を HTMLに変換したり、PDF、Wordに変換することで、素早くシンプルに文章を作ることが可能になる「エコシステム」が生まれています。 例えば、このMediumの記事は、 というように使っています。 Markdown を便利に利用できるアプリは、 と、無数に存在しています。基本的に、Markdownで書いて、変換してもらうだけです。 Markdownを使うと、圧倒的に生産性が上がります。

Markdown の学び方

(1) Googleで検索する

まず、Googleで以下のように検索します。 ざっと記事を読めば、どんなことに使えるか?どう使えば便利か?がわかります。

(2) Markdownの書き方を調べる

次に、同様に Markdown の使い方を調べます。ここで重要なことは「Markdownとは何か?」を理解するのではなく、 「どんなふうん使えばいいのか?」「具体的に、どう書くか、どう使うか?」 を、 つまり、探求するように学ぶことが大切です。頭でっかちになる前に、さっさと試しましょう。使い方は、無数にあり、あなたなりの工夫を考え出すことが大切です。

(3) 試す

どんなことでもいいので、「やってみたい」「試してみたい」と思う事例を見つけて、試してみましょう。例えば、Markdownで書いて、PDFで出力することを試しても良いでしょう。以下のページで試してみてください。 StackEdit
Online Markdown Editor – Dillinger, the Last Markdown Editor ever 他にも、書き上げたMarkdownをeBookにするサービスを試してみても良いでしょう。 電書ちゃんのでんでんコンバーター

(4) 普段に使うアイデアを考える

日常で、Markdownをわざと使ってみます。例えば、メール本文で使ってみるなどです。他にも、ご自身が使っているアプリがMarkdownに対応していたら、使うようにします。 普段の仕事や活動を「学ぶ機会」に変える事が重要です。これを Learning by Doing と呼んでいます。

Markdwon エディタ

ところで、Markdown を活用するには、 Markdown エディタがオススメです。シンプルな機能しかありませんが、それでも十分に便利です。 無料のものから、有料のもの、高価なものから(例えばUlyssesなど)、安価なものまで試してみて、最終的には iA Writer に落ち着きました。一番便利!とも思っています。 iA Writerは、Mac, iPhone, iPad, Android, Windows で使えます。特に、iPhoneとMac版は同期してくれる(iCloud経由)ので、非常に便利です。 移動中に、iPhoneでアイデアを書き留め(箇条書きを使います)、
iPadでアウトラインを作り、文章を完成させ、
Macで最終画像などを入れたり、独自のPDF形式にエクスポートする このような使い方ができます。

Markdown で文章を考えるステップ

最後に、私の Markdown 活用方法を紹介して終わりたいと思います。 以下のようなプロセスで、文章を書いています。使うアプリは、iA Writerです。

(1) アイデアを出す

  1. iA Writerを立ち上げる
  2. 文章のアイデアを箇条書き(-ハイフンを使う)アウトプット
  3. 箇条書きをインデントして、さらに細かく分割したりする

(2) コンセプトの決定と下書き

  1. アイデアリストを見ながら、「何について書くか?」を決定する
  2. 新しいメモを立ち上げる(iA Writerです)
  3. 箇条書きだけで、文章構成を書く
文章を書くときは、最初に「期待する結果」を書き出します。

期待する結果

Markdownでサクッと書きます。このゴールに向かって、アウトラインを作ります(箇条書きで、細かく構成を決定する)

(3) 書く (そして分岐する)

アウトラインを書いている最中に、他にもいろんなアイデアが出てきます。そうなったら、「別のメモを追加」して、期待する結果と簡単なアウトラインだけを作ります。乗ってたら、そっちを書き続けたりします。 とにかく「次のアイデア」が浮かんだら、新しいメモに書き加えるようにします。これがとても重要です。こうやって、アイデアを別の場所においておくことで、目の前の文章に集中できます。 もちろん、書くときは、Markdown を使います。

(4) プレビューする

書いている最中や、書き上げてから「プレビュー」します。 iA Writerなら、簡単にプレビュー機能で、Markdownを装飾した状態でチェックできます。また、PDF形式に出力できるので、それを iPad Proで開いて、Apple Pencil で校正チェックしたりします。 とにかく「別の形に変換」して、チェックする事が大切です。 リフレームする事で、別の角度から情報をチェックし、考え直す事ができます。

(5) リリース

iA Writerを使っているので、そこから と簡単に済ませる事ができます。 時々は、「フォーマット済み」テキストをコピーして、ワープロアプリ系に貼り付けたりしています。

今日からMarkdown!!

是非、Markdownを使って見てください。きっと生産性が大幅に向上するはず!




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