スクリーンキャプチャより学び方を学ぼう
「使いながら、学ぶ体質」になろう
先日、こんな問い合わせがきました。
ワークショップ中、ずっと自分のパソコンを録画したいのですが、可能でしょうか?教えてもらったことを、全部録画しておかないと覚えておく自信がないのです。
Camtasia というソフトは持っていますので、これで録画しますが、良いでしょうか?
あなたなら、どう答えますか?
サービス精神溢れるなら、快く
- 「どうぞ、どうぞ、構いません」
- 「後で詳細な動画マニュアルを用意しますので、ご安心を」
と答えたりするでしょう。
でも、
私たちは「録画しないでください」と答えます
もちろん、ワークショップの内容が流出することを、恐れているわけではありません。この方のパソコンの容量を心配したわけでもありません。
大きく分けて3つの理由があります。
- 録画したビデオは「すぐに古くなって意味がない」から
- 録画するという行為が、「学習」を阻害するから
- 「学び方を学べば」録画なんて必要なくなるから
今日は、このことについて、お伝えしたいと思います。
とどまることなく、進化(変化)するWebサービス
toiee Lab では、Mailerlite というメール配信サービスを使っています。そこから、こんなメールが届きました。
- 「ランディングページ機能」を公開したよ! 先週、公開したポップアップフォームもあるけど、今日は「ランディングページ」が作れるようになった
- このランディングページ機能は、コーディングの知識も必要ないし、すごく簡単に作れるよ
- テンプレートギャラリーを使えば、さらに簡単にすごいいいページが作れるようになるよ
という内容でした。
ランディングページとは「上から下に読ませて、メールアドレスの登録などを促す」Webページのことです。
通常、メール配信サービスは「登録フォーム」は提供しますが、ランディングページ作成機能は提供しません。その結果、ランディングページを作ろうと思うと、
- 別のWebサービス(Strikinglyなど)でページを作る
- Mailerliteで埋め込みフォームを生成する
- サイトに埋め込む
- アクセス解析ソフトを導入する
などをしていたのが、
- Mailerliteで「ランディング・ページを作る」
以上で、必要なことがすべてできます。
録画しても、すぐに古くなります
アップデートに着いて行くには、録画してはいけない
Mailerliteは、他にも「ちょっとした機能」を追加したり、お知らせを見やすくしたりと、細かい調整をします。
つまり、録画しても、すぐに古くなります。タイミング悪ければ、録画して家に帰って、Mailerliteを開いたら
「なんじゃこりゃ?」
「画面が、ぜんぜん違う!」
なんてことも、ないとは言えません。
現代において
- マニュアルによって位置を覚えて触る
- 録画されたマニュアルで、なぞるように触る
では、次々進化するWebサービスには着いていけません。
録画するから覚えられない
録画すると見えないものが増えます
人間は(人間だけではないですが)、様々な情報から「必要な情報」を自動的に選別して意識に上げます。この役割を担うのが、RAS (Reticular Activating System : 網様体賦活系)という脳の部位です。
このRASは「重要」と思ったもの認識として意識に上げます。
マニュアルを見て、その通りになぞろうとすると「システム側から、小さな変化によってお知らせ」をしていても気づきません。
例えば、「ここに新しいボタンがあるよ!」という点滅も無視します。目に入っていますが、見えていません。マニュアル通りのボタンを探して、うろうろします。
こうなると、新規のお知らせなどは目に行きませんし、重要なヒントも目に入りません。
こうやって「新しい何か?」や「変化」に鈍感になります。すると、ますます、使い方を覚えられなくなってしまいます。
また、録画するという行為は「覚えなくていい」と無意識に伝えているのと変わりません。結果、記憶力は低下します。覚えるために、書くのと、忘れるから録画するでは、全然違います。
さらに、、、
マニュアル通りは、人間には合わない
学び方を学ぼう
非常に重要なことですが、私たち人間の脳は、決まりきったことを覚えてなぞって、繰り返すのは苦手です。
むしろ、創造的な活動の方が得意です。
動画マニュアルを見て、なぞるようなことをしなければ、誰もがもっとWebサービス、ITデバイスを使いこなせます。
それなのに、IT苦手意識がある人や、パソコン教室、書籍、学校教育では「正しいやり方」を覚え込ませて、繰り返すようなことを強制します。これは、人間の尊厳を踏みにじる行為ぐらいに思っています。
このような鳩やサルのような学び方ではなく、人間の脳の特性を利用した「仮説、検証ループ」を使うような学び方をすれば良いのです。そうすると、誰もが短時間に「驚くほど、よく学べ」ます。
しかも、「変化に強くなる」ように学べます。
別の言い方をすれば、
その場で触りながら学べるように、学ぶ
ということが可能です。もちろん、このような状態になるように、教育カリキュラムや伝え方を工夫する必要がありますが、不可能ではありません(toiee Lab で独自に理論化した4サイクルを使うと、設計できます)。
どうやって学べば良いのか?
「マニュアルを見て、それを繰り返して覚える」は、人間には向きません。私たちは、ハトやサルよりも、前頭前野が発達していることもあり、「餌をちらつかされて、同じことを繰り返す」のが苦手です。
どうしても、余計なことを考え始めたりします。それを一生懸命抑制して、初めて「同じことを繰り返せる」のですが、それはとてもストレスフルな行為です。
一方で、私たちが得意なものが「探求」です。toiee Lab では「探求モード」と呼んでいるのですが、Webアプリなどを触る時に、
- 気になるものを発見する(小さな変化に注目する)
- クリックする前に「どうなるか予想する」(できる限り、詳細に)
- なぜ、そう思ったか?を考える(前提や過去の経験を意識にあげる)
- 実際に触ってみる
- 驚く or 納得する(この瞬間に学習が起こります)
この5ステップを意識して使うことで、様々な機能が見えてくるようになります。すると、次に
- あれは、どうなっているんだろうか?
- これは、どういう仕組みなんだろうか?
と疑問が湧いてきます。そして、その疑問を誰かに質問して「解決してもらうのではなく」、自分で解決するように、上記の5つのステップを応用して
- 疑問をあげる
- おそらく、こうなっていると仮説を決める
- 確かめる実験を考える
- やってみる
- 驚く、納得する
を繰り返します。すると、短時間でどんどん新しい機能を学べるだけでなく、「応用方法」まで考えだしてしまいます。
マニュアル不要の人間になります
toiee Lab では、このような学習プロセスを意図的に引き出すように、ICT系の講座を設計しています。また、ファシリテーターは、上記の探求モードを手助けするように、質問したり、デモンストレーションをします。
すると、
- 「アァ、なるほど、そうやって探求するんだね!」
となり「学び方を学び」ます。
このように三時間ぐらい触っていると、マニュアル不要の人間に近づいていきます。
使いながら、学ぶことの重要性
toiee Lab のIT系授業の特徴は、「使いながら学べるようにすること」です。使いながら学べるようになれば、「覚える必要はない」状態になります。
なぜなら、使い方を忘れてしまっても、その場で、触りながら「使い方を再発見」すれば良いからです。
このような「使いながら学べる体質」になってしまえば、動画で使い方を撮影する必要はありませんし、ノートにメモする必要もありません(結構な数の人がノートにメモしますね)もちろん、トイレの壁に貼りだしておく必要もありません。
繰り返しになりますが、「使いながら学べる」から、忘れたって、その瞬間に学べば良いのです。
これが「探求モード」であり、「学び方を学ぶ」最大の利点です。
是非、ITが苦手と思うなら、探求モードを試してくださいね!
toiee Lab では「時々、ワークショップ」を開いています。
普段は教材開発や、ファシリテーター育成を行っていますが、「直接、受講者と関わるため」に、ワークショップを開いています。