WordPress が必要な人、不要な人
多様化するニーズ、テクノロジー、チャンスとWeb、システム
私は、かつてWordPressが嫌いでした。直感的でない、使いづらい、自分が今何をしているかわからなくなる、管理画面が意味不明などなど。
しかし、今は「好き」になりました。機会があったら、WordCampというイベントにも参加したいと思っているぐらいです。
この記事では、かつての私のように「WordPress嫌い」な人が、この面白い世界に飛び込めるように、
- 背景
- 仕組み
- 学び方
- メンタルモデル
- 今後について
をお伝えしたいと思っています。
が、、、その前に、「WordPressを使うべきケース、使わない方が良いケース」について、説明します。
なぜなら、WordPressは「直感的に適当に触れば、使えるようになるものではない」からです。仕組みを知り、仕組みを実感できる程度には、触ってみないと理解ができません。
つまり、学習コストがかかります。
そこで、まずは、WordPressを選択する、しないをはっきりさせた方が良いです。
その判断材料を提供するのが、この記事の目的です。
本当に、WordPressは必要か?
WordPressを学び始める前に、考えるべきことがあります。それは、そもそもWordPressが必要なのか?です。
まずは、この点から議論したいと思います。
現代のビジネス環境について
現代のビジネスにおいては、「ビジネスシステム」は、必須です。例えば、小さな飲食店でも、予約を受け付けるとき、オンライン予約したいと思うのが、今の顧客心理です。
つまり、電話と紙の表ではなく、ウェブサイトとシステムが必要になります。
また、同じ業種でも中身は大きく違うことが多々あります。
例えば、ある整体院では、来院してもらって施術するだけでは、なかなか効果が薄いため、自宅での療養(食事や生活習慣)のアドバイスを行なっています。
もし、オンラインコースで、フォロアップできれば、顧客満足は、大きく向上します。
なぜなら患者の多くは「もっと質問したい」と思っていますが、時間が限られています。一方、患者さんの質問の多くは、「同じもの」です。
システムが使えば、オンラインコースを用意し、見てもらうことで、施術への理解が深まり、治療効果があがります。
顧客のことを考え、使えるものをどんどん使うことは、最終的には、競争優位性を確保することにもなります。
Webサービスの台頭
では、オンラインコースをスタートしたいとして、どうすればよいでしょうか?
今は便利な時代で、簡易なものなら、さまざまなWebサービスがあります。無料スタートでき、サーバー設定なども不要で、導入するハードルは低くなっています。
例えば、オンラインコースなら、[Teachable]() や Thinkfic が有名です。
これらの企業が発見した興味深い市場は、「ニッチなスキルや知識の供給と需要」です。詳しくは、TechCrunchの記事をご覧ください。
多様化するニーズと、システムの関係
また、時代の雰囲気として、「人が集まって何かをしよう」という機運が高まっています。一昔前は、フリーランサーのための低コストな居場所であったシェアオフィスは、「コワーキングスペース」と呼ばれるものに発展しました。
最近、大阪難波に4店舗目が開設される「WeWork」は、仕事場でありながら、新しいビジネスパートナーを見つけたり、イノベーションの機会の場や、プロフェッショナルをリクルーティングする場所になっています。
この企業は、「人が集まること」の需要と価値を理解し、成長してきました。その結果、世界中で使われているコミュニティのためのウェブサービスである、Meetup.com を買収しました。
このような背景からも、「コミュ二ティの構築」も、ビジネスとして重要な要素になりつつあります。また、コミュニティの構築は、金銭面だけでなく、人の人生を豊かにするためにも、ビジネスが取り組むべきチャンスと言えます。
もちろん、コミュニティの形成にも、Webおよびシステムが不可欠です。誰でもスマホを持っている時代にフィットしたつながる方法(オフラインで会うにしても)が、求められています。
以上のようなことから、スタートアップの多くは、ニーズを発見し、ウェブサービス化するトレンドがあります。
小さなニーズでも、大概、なんらかのウェブサービスが用意されています。
独自システムを持たなくてもよい時代
私は、かつてソフトウェア会社を経営していました。その当時、ソフトの販売、サポート、会員認証などのために、「独自システム」を構築していました。
設計(UI, UX)は、私が設計し、コーディング(プログラミング)は、社員が行なってくれました。
当時、このシステムは、画期的で、何人もの起業家の方々に「同じものが欲しい」と言われました。
しかしながら、受注のシステム会社になるつもりがなかったため、お断りしていました。
それから、何年も経った今、独自システムを持たなくても、近いことができるようになりました。
例えば、カフェオーナーであれば、
- メインのウェブサイトは、Strikingly
- 情報発信は、Instagram
- コーヒーコースを、Teachableで提供
- イベントは、PeatixかMeetup
- 予約は、Airレジ(の予約サービス)
と、複数のウェブサービスを使うことで、完結します。
【中間まとめ】
ここまでの内容をまとめると、以下の3点です。
- 多様なニーズがあり、視点を変えればビジネスチャンスがある
- そのチャンスを形にするには、システムが必須
- システムは、安価かつ簡単に手に入れられる環境が揃っている
- シンプルな使い方だけなら、WordPressは不要
WordPressが必要な人とは?
いくつかのウェブサービスを組み合わせれば、大抵のことは可能です。また、海外では当たり前の「システム連携(Zapierなど)」を使えば、
- 購入者をメールマガジンに自動登録
- 売り上げを自動で、経理システムに登録
なども可能です。
また、ウェブサイトを作成することについても、Strikinglyなどを使えば、たった1日で、十分なものが作れます。
インターネットやサーバーの知識がない人が、見よう見まねでWordPressを使うと、サーバーのセットアップだけで、1日が潰れてしまいます。
したがって、多くの人にとって、わざわざ苦労して、WordPressでサイトを持つ理由がありません。他のソフトでも同様です。
では、どんな人、どんな状況で、WordPressを必要とするでしょうか?
広告収入(アフィリエイトなども含む)
本業、あるいは趣味の延長で、コンテンツから収益を得るなら、独自ドメインを取得し、独立したサイトを構築する必要があります。
価値あるコンテンツ(記事)を書き、アクセスを集め、広告掲載(Google Adsenseや、アフィリエイト)を行い、それらから収入を得る場合は、WordPressが最適です。
JimdooやStrikinglyでも、有料版にする事で、広告掲載可能ですが、工夫ができません。例えば、全ページになんらかのお知らせを置いたり、ちょっとした工夫を積み重ねることが、アクセスアップや、リピートで重要です。
あまり考えられませんが、なんらかの事情でサイトを閉鎖されたり、別サービスに移行する際、データが簡単に取り出せない可能性があります。
作り直すのは、かなり手間です。
また、デザインを一新したり、内容を全面的に変更することなどを行う場合、Webサービスの場合、「手動(マンパワー)」になります。WordPressであれば、ルールがはっきりしていれば、自動化できたり、様々なツールが付属しており、便利に一括編集ができたりします(キーワードを一括置換するなど)。
長くコンテンツを提供し続けるのであれば、WordPressが良いでしょう。
独自のシステムが欲しい場合
以前、私がソフトウェア会社を経営していた時、「独自のシステム」を構築しました。私がデザインし、社員のプログラマーがコーディング(プログラミング)をしました。
この独自システムでは、
- 会員登録
- 決済(クレジットカード、銀行振込、銀行振込確認後のメールの自動化)
- 会員認証
- 会員サイト(Webページのアクセスをコントロール)
- マーケティングオートメーション(スケジュールにしたがってメールを配信)
- メールの送りわけ(特定の商品購入者や、逆に除外する人なども制御)
など、必要なものを全部盛り込んで、シンプルに、使いやすく構築しました。
このシステムは当時(約10年前)は、画期的だったようで、多くの起業家、経営コンサルタントなどから「同じものが欲しい」と言われました(ビジネスの方針上、断りました)。なぜなら、ある程度の規模になれば「顧客体験」が良い、悪いは「成果に直結」します。
toiee Lab では、様々なWebサービスを組み合わせて、教材を提供してきました。しかしながら、多くのお客様は、「いろんなWebサービスに自由にアクセスできるほど、ITが得意ではない」です。
その結果、「一度のログインで、全部のコンテンツにアクセス」したいと思います。
つまり、「ある程度、複雑なサービス」を提供するとなると、「全てを1箇所で提供する」ことが必要です。特に、顧客数が増えてきたら(toiee Lab の場合、3,000人以上います)、事務作業も混乱してきます。
結果、「独自システム」で情報を一元化することは、ユーザーだけでなく、ビジネスオーナー側にも大きなメリットがあります。
「独自システム」を外注するべき時期
では、独自システムを外注するとなれば、どれぐらいの費用がかかるでしょうか?
もちろん、システムの内容によりますが、安くても30万円から、10年前に私たちが実現したようなシステムなら、300万円近くになります。
しかし、それ以上に大きな問題があります。
それは「本当に必要なシステムは、何か?」が、自明のようで、実際は「的外れ」であることが多いことです。つまり、作ってもらったのに「顧客ニーズ」や「ビジネスオーナーのニーズにあっていない」ことが往々にしてあります。
toiee Labの例で説明します。
私たちは、様々なインタビューを通じて「ワークショップの様子を収録したオンラインコース」を提供することに決定しました。そして、Teachableで提供したものの30近くのコースがあることで、「どこにコースがあるかわからない」となり、混乱を与えました。
そこで「WordPressに移動」して、整理された「ナレッジベース形式」のWebサイトで提供しました。ところが、ナレッジベース形式だと、欲しい情報にすぐにアクセスできません。結果、使いづらいことが判明しました。
そして次に、「シンプルにWebサイト型」で提供してみました。サイドバーから、すぐにワークショップを探せるようにした結果、多くの人から「アクセスしやすくなった」と評価をいただきました。
ところが追跡調査した結果、「忙しくて、見れない」というのです。こればっかりは、相手の性にできそうですが、それも解決すべき課題です。
その後の調査と、テストの末「モバイル端末で簡単に視聴できる」ことが必要だとわかりました。つまり、隙間時間を利用してなら、忙しくても閲覧できるということです。
独自のアプリを作るには、コストだけでなく、技術力や、仕様の決定が必要です。動画配信のプラットフォームの見直しなど、多くのことを解決する必要があります。
そこで、今あるツールだけで実現すべく「Podcast」を使うことにしました。Podcastなら、
- WiFi環境でダウンロードしておいて、出先で視聴できる
- 倍速再生ができる
- 途中まで、閲覧したことがわかる(途中再生可能)
- どのスマホでも使える
などの特徴があります。
このように「どのような形が良いかを、模索しながら設計してくれる『デザイン思考』ができるプログラマー」を雇わないと、作ったはいいが、使われないものが生まれてしまいます。
もちろん、デザイン思考とコーディングによって、「本当に必要なシステム」を手にいれるには、コストはかかります(トータルしたら、リターンは大きいでしょう)。
WordPressを活用した「システム開発」
toiee Lab では、WordPressを最大限活用しました。
社内にプログラマはいません(一応、私が少しだけコードを叩けますが、日曜プログラマレベルです)。完全に独自のシステムを構築してもらうにしても、コストはかけられません。
そこでWordPressのプラグインを駆使することにしました。
WordPressのプラグインで有名なものは、「有料テーマがサポートしていることが多い」です。例えば、WooCommerceなら、有料テーマの多くが対応しています。デフォルトのデザインから、テーマにぴったりに生まれ変わったりします。
同様に、Podcastプラグインを、少しだけ改良して、「閲覧制限」ができるようにするなど、「ちょっとだけ改良」と「プラグイン」によって、低コストで、圧倒的に早く、安全にビジネスシステムを手に入れました。
また、WordPressは海外でも有名です。WordPressと「Webサービスの連動(メール配信システムなど)」も可能です。
実際、海外では「WordPressをベースとした、ビジネスシステムを構築する」仕事が多数あり、大きい市場になっていたりします。
まとめ
つまり、WordPress を使うべき人は、「WordPressの可能性」を使いたい人に限ります。具体的には、
- 顧客体験をよくするための「一元化」(決済、会員認証など)
- ナレッジベース、Podcast、オンラインコース、フォーラムなどの提供
- WordPressと連動させて、様々なことを自動化する(事務作業の大幅なカットなど)
- 細かな検索エンジン対策を行いたい
- 長く、コンテンツを提供していく
ような方には、初期の学習コストを支払って、WordPressを使う価値があります。
一方で、「とりあえず、あるだけでいい」や「1コースだけオンラインコースを提供する」など、シンプルな用途で、顧客数も少ないなら事務作業も少ないです。学習コストを回収するほど、Webを活用しないのであれば、「Webサービスを学ぶ」ことに集中すべきです。
以上、参考になれば幸いです。