ラーニング・コミュニティとは?
toiee Lab Learning Community
最新記事(2022年)
オンラインで「ラーニング・コミュニティ(学習コミュニティ)」を運営する方法について記事にまとめました。ご興味のある方はご覧ください。
オンラインで作る!「ラーニングコミュニティ(学習コミュニティ)」の運営ガイド
こんにちは
toiee Lab 亀田です。
何年もの研究、実践、ビジネス化などを通じ、私たちは「良いラーニング・コミュニティ」を世界中に生み出すことに集中することに決めました。
ここでは、toiee Lab の学習理論、ラーニング・ファシリテーション、ラーニングデザイン、チーム学習、ラーニングコミュニティ、実際の運用に至る経緯を説明します。
放課後のお茶会、toiee cafeから始まった
toiee Lab のスタートは、放課後に大学近くのカフェで開かれる不定期な「お茶会」でした。私の授業に参加する大学生からの要望で、スタートしました。
お茶会では、私がなんらかの講義を行うのではなく、問いを出し、その問いの答えを探すために議論し、読書し、振り返るというシンプルなものでした。私は、なんらかの答えに導いたり、一方的に何かを教えたりしませんでした。生徒が自分で考え、答えを探す手伝いだけをしました。
今思えば、これが「ラーニング・ファシリテーション」だったと思います。
このお茶会での体験は、生徒たちが大学に期待し、落胆した「知的興奮」「学ぶ楽しさ」に溢れていました。私の専門外の政治の領域でも、問いを出し、チームで考え学ぶを繰り返すことで、成績が上がったり、大学の授業に興味を持てたりする生徒が何人も現れました。
そして、自然な流れとして
- 「なぜ、大学の授業が、『問いカフェ』のようになっていないんだろう?」
- 「こんな学び方が、もっと広まって、当たり前になったらすごいんじゃないか?」
となり、toiee と名前をつけ、大学前にスペースを借り、toiee Lab はスタートしました。
ラーニングの研究を始める
最初に行ったものは、ラーニングの研究です。私たちが体験したものは、すでに学術の世界や、様々な分野で実践されているのではないか?と考え、事例や研究を調べました。
探せば見つかるもので、「チーム学習」「コミュニティーラーニング」「プロジェクト・ベースド・ラーニング」など、近いものがたくさんありました。
また、トップ研究者は「研究会」「委員会」「ワークショップ」という形で、当たり前のようにチーム学習をしています。チーム学習という視点で眺めてみれば、すぐ近くに事例がありました。
トップ研究者は、チーム学習をしていた
私の大学の恩師は、日本で最も大きな学会の会長や、国際学会の会長を歴任した業界トップの方です。師曰く、「私立大学の人間として、登れるだけのものは全部登った」とのこと(旧帝大系でないとなれないポジションがあるという古い慣習が今でもある)。
また、師と年齢の近い研究者仲間の多くは、文化功労賞をはじめとする優れた研究をされている方ばかりです。学会のトップの人間が、ゴロゴロいました。
学生の頃、「どうやって、そのような研究アイデア、研究成果を生み出したのですか?」と尋ねてみたところ、まさにチーム学習であることを教えられました。
私の師が発起人となり、「研究会」と称して、分野の違う研究者が集まり、それぞれの専門知識を交わらせた時、どんな研究が可能か?を議論し、新しい分野をお互いに教え合うことをしたそうです。
このような取り組みによって、たった1年半の期間にも関わらず、10年、20年続き、表彰されるような研究の土台がいくつも生まれたことを教えていただきました。
そして、その取り組みは「実に楽しかった。知的興奮に満ちていた」とのことです。
レベルは関係ない
研究は「まだ解明されていない分野、知識、技術を生み出す」ための活動です。我々、普通の人間からしたら縁遠い話で、彼らの学び方、やっていることは、参考にならないと思うかもしれません。
しかし、脳の観点からみれば同じことです。トップ研究者のチーム学習で学び、探求するのも、我々普通の人間が「新しい分野を学ぶこと」も、どちらも「本人にとっては、未知の領域」です。研究者の場合は、たまたま知の地平の未開拓が対象で、我々が学ぶものは、既存の知識というだけで、学ぶ側、脳の視点からみれば「未知のもの」を学ぶことに違いはありません。
つまり、トップ研究者が「楽しい!」と思って学んでいる方法は、そのまま誰にでも応用ができます。対象の難易度は関係ありません。学び方の上手、下手はあるかもしれませんが、「学習者の視点からすれば、同じ」です。
つまり、私たちは「レベルに関係なく」、未知の領域を「楽しんで学ぶ」ことができます。
チーム学習を理論化する
このような発見から、チーム学習をあらゆる分野(IT、スポーツ、デッサン、写真、マーケティング、プログラミングなど)で、安定して実現できるような「方法論」を確立することを目指しました。
教育工学の論文などを読み漁り、教育学、心理学に関する著名な専門書を一通り目を通しました。
しかし、「ガイドライン」や「統計的優位性の証拠」は、集まるものの
- 人間特有の学習の定義
- 学習のメカニズムのモデル化
- 学習モデルを土台としたファシリテーションの理論
- 学習モデルを土台としたラーニングデザインの理論
を見つけることができませんでした。
そこで、全く別の分野である「人工生命」「複雑系」「適応システム」「システム論」など(私の専門分野でした)の研究を土台に、人の学習を誰もが扱えるシンプルなモデルとして定義し、ファシリテーション、ラーニングデザイン、チーム学習のデザイン理論を構築しました。
これを「FILM2学習理論」と名付け、誰もが学べるものにすべく、実際にたくさんのワークショップを構築し、ファシリテーション技術を体系化し、教材を開発してきました。
チーム学習を直接届ける
研究の過程で、100人以上の様々な分野の方々(大学の先生、小学校の先生、国体スポーツのコーチ、サッカーコーチ、パイロットの教官、オルタナティブ教育の教員など)に、ラーニング・ファシリテーター・ワークショップに参加していただき、理論をお伝えしてきました。
しかしながら、既存の教育システムと、toieeカフェから始まった学び方は、すべてが正反対で、採用してもらうことが難しい現実が明らかになりました。
多くの先生方がおっしゃることは、
「toiee Labの教育、やり方は、私が実現したいと思ったもの、そのものです!」 「でも、学校ではできないんですよね。短期の結果が求められるので」
理想であるのに、短期の結果が出せないという理由で、広がらない壁に当たりました。そこで、私たちは、先生を後押しするのではなく、「自分たちが先頭に立って、短期的にも、長期的にも結果を出す」ことで、チーム学習を広げようと考えました。
その結果、現代の生活、ニーズ、使えるテクノロジーなどを検討し、全くゼロから「新しい教育の形」を探求しました。
その結果、生まれたものが「スクラム」です。
スクラム・ラーニング
スクラム・ラーニングは、
「毎日の忙しい生活の中でも、生活リズム、ライフスタイルを崩すことなく、特別なコミットメント(決意)や、プライベートを犠牲にすることなく、今まで学べなかったものを、自立して学べるようになること。しかも、学ぶこと自体が楽しくなり、ともに学び、刺激し合う学ぶコミュニティを生み出す」
ことを目的として、構築されました。
スクラムは、以下のような要素で構成されています。
- メタ探求型学習(FILM2学習理論をベースにする)
- 90分のオンライン・ワークショップ
- 反転学習(ワークショップの前に予習する)
- 60 – 90分のオンライン・自習室
- 60 – 90分のオンライン・探求会
- 60 – 90分のオンライン・お茶会
- ワークショップの録画をシェア
- 専用SNS(Slack)を使った教えあい、コミュニケーション
- 時々、オフラインでイベント
- 1ヶ月、3ヶ月ごとの「振り返り」
羅列すると複雑そうに見えますが、学ぶ側の行動はとてもシンプルです。
- 興味のあるイベント(ワークショップ、自習室、お茶会、探求会)に参加する
- 専用SNS(Slack)でコミュニケーション
- 自分なりの継続学習(他の人の学び方を参考にしながら)
学ぶこと、学び方を改善すること、つながりあって学ぶことが「日常の一部」になります。そして、Facebook、Twitter、Instagramを見るよりも先に「専用SNSを開く」ようになり、加速度的に知識が増えていきます。
長期(6ヶ月)に渡って、取り組んだ結果、
- 「終わるのが寂しい」
- 「すごく良い仲間ができた。かけがえがないコミュニティーが生まれた」
- 「このまま続きで、みんなで学んでいきたい」
などの感想をいただきました。特に印象深かった言葉は、
「チーム学習は、プログラミングをマスターするために、仕方なくやるものだと思っていました。この場限りのつながりしかできないと思っていました。でも今は、「このコミュニティ」「友達」こそ財産だと思っています。何かを得るためのチーム学習ではなく、チーム学習することこそ、本当の価値だと思います」
同様のことを、多くの参加者の方々から頂きました。
長期スクラムの最大の成果は、「参加者が習得した知識、スキル、姿勢」だけでなく、 「ラーニング・コミュニティ」だと確信しています。良いラーニング・コミュニティが生まれれば、自然と学ぶスピード、質は高まります。教材がなくても、学ぶことができてしまいます。
このようにたくさんの成果が得られ、理想とする教育を「現実とする」方法が見えてきました。
長期のスクラム・ラーニングの課題
一方で、長期スクラムでは課題も明らかになりました。それは「学びたいものの多様性に対応できないこと」でした。
何かを学び始めた時、基本的に「無知」です。無知の状態で計画や、目標、ゴールを決めます。そして、学び始め、知識やスキルを増やし、現実の世界で行動を起こします。すると、目標が変わったり、欲しい知識や、スキルが変わってしまします。
例えば、プログラミングで稼ぐために、プログラミングの前段階である「HTML・CSS・CSSフレームワーク」を学んだ後にクラウドソースなどで、仕事を探すと、、、、サーバーの引越しの仕事が、学びながら知識を増やし、稼げる方法だとわかったりします。
すると、次に学びたいことは「PHP言語」ではなく、サーバーやインターネットの仕組みになります。サーバー、インターネットの知識を得て、仕事を行い、さらにWordPressの更新を手伝う中で、「もうちょっと、ビジネス用にカスタマイズしたい」となった時、プログラミングを学びたい!となることもあります。
このように「人それぞれ、学ぶ経路は違う」し「時々で変わる」ということです。
長期のスクラムでは、決めたカリキュラムに沿って「今月は、これ」「来月は、これ」と進めていきます。すると、学ぶ意欲が低いまま学ぶことになって頭に入らなかったりします。
また、忙しい中参加しているため、どうしても1ヶ月ほど、間が開いてしまうことがあります。すると、浦島太郎状態になり、気づけば、置いてかれていて、追いつけない・・・ということが起こります。
長期スクラムは「良いコミュニティ」を作ることができる一方、「個々人の「今学びたい」」に、対応しきれません。大きな乖離が発生することも、しばしばあります。
短期のスクラム(ミニスクラム)という、小さなイノベーション
toiee Lab 内では、このような問題を認識し、解決策を模索していました。いくつかの試行錯誤の結果、たどり着いたものが「ミニスクラム」です。スクラムは6ヶ月の長期ですが、ミニスクラムは「1ヶ月程度」の短いものになります。
ミニスクラムとは、テーマを絞り込んだ短い期間で終了するものです。中身は、長期のスクラムと同じです。ワークショップ、探求会、情報交換など、チーム学習メソッドを活用して進行します。ただし、テーマが「マーケティング4.0を理解する」「HTML・CSS・CSSフーレムワークを理解する」など、特化したものになり、期間も1ヶ月で終了とします。
このようなミニスクラムを「多種多様」かつ「同時平行」に開催することで、今自分が学びたいものに、参加することができます。また、「今月はちょっと忙しい」という時は、来月を待つなど、自由に学ぶことができます。
例えば、こんな学ぶプロセスが可能です。まず、「マーケティング4.0ミニスクラム」に参加します。その中で、コンテンツマーケティングが必要だと感じたとします。文章が苦手だなと思ったら、「わかりやすい文章のミニスクラム」に入ります。このように「知識が入って、課題が明らかになったら、次に必要と思われるもの」を選びます。また、最終的にはWordPressが必要になるから、ちょっとずつ、WordPressのミニスクラムに顔を出して、慣れておくことも可能です。
このように「自分の興味関心、必要」に合わせて学べる方式が「多種多様なミニスクラム」を「同時平行」で利用することで可能になります。
toiee Lab ラーニング・コミュニティへ
ただし、ミニスクラム方式だけだと「学ぶコミュニティ」が継続しません。ミニスクラム終了で、バラバラになってしまいます。気心知れた人や、他分野の人が交流し、情報交換すること、学び方を学びあうことを通じて初めて、「一人で学ぶよりも、何倍も楽しく、何倍も有意義で、何倍も素早く、遠くへ」行けます。
長期スクラムは、「ラーニングコミュニティ」を生み出すことができます。ミニスクラムになると、難しくなります。
そこで「ラーニング・コミュニティ」を作り、その中で「ミニスクラム」を開催することを繰り返していきます。これによって、長期スクラムのメリットを活かしつつ、長期スクラムのデメリットをミニスクラムで解消することができます。
ざっくりとしたイメージで説明すると、
- オンライン上の「カリキュラムのない自由な学校」に入学する
- 自分で好きな授業や、サークル(部活)を選んで参加する
- いろんなものに顔を出して、友達を作って、ともに学んでいく
そのような、全く新しい、真に「学習者中心」の教育サービスが「toiee Lab ラーニング・コミュニティ」です。
ラーニング・コミュニティは、「学ぶことを楽しむ」「個人の認識の差、経験の差が、よく学ぶために重要」という価値観を土台にします。参加者同士で、成長し合えるような「オンラインの場」を作ることを目標として進めていきます。
私たちは「コミュニティ」を育てることが、そのまま経済性を成り立たせることになるような仕組みを考え出し、その方法を世界中に広げたいと考えています。
まとめ
toiee Labは、「人間特有の学び方」「それを定式化した学習理論」、学習理論をベースとした「ファシリテーション」「ラーニングデザイン」を研究してきました。
次に、現実の世界で実践するための知の体系を作るため、多くの教材、教育サービスを模索してきました。オフラインワークショップ、ワークショップ録画、3日集中講座、1日集中、90分ワークショップ、オンラインワークショップなど。
それらの集大成として、スクラムラーニングを考案し、約1年に渡って、改善しながら進んできました。そして、スクラムラーニングの抱える課題、そして私たちが理想とするものを考え直しました。
その結果が「toiee Labラーニング・コミュニティ」です。
toiee Lab ラーニング・コミュニティーは、単なるコミュニティではなく「カリキュラムがなく、自由で、お互いにオープンで繋がり合いやすいオンラインの学校」のような場所です。
専用SNS内で
- 分野別の交流の場
- ミニスクラムの交流の場
- その他の交流の場
- 多種多様なミニスクラムが開催されている
- お茶会で、気軽に会話
- 単発のワークショップやイベントでキッカケを得る
- 時々、オフラインで
など。
これまでにない新しい教育サービスです。
追伸:
もし、ラーニング・コミュニティを作ること、運営することについて、興味がある方は、「学ぶミュニティー・ニュースレター」にご登録ください。
別途、最新の取り組み、ノウハウ、考え方などをお伝えします。