### 5. 今回の結果を得ることができた要因要因として、大きく分けて次の2つが考えられる。
a. 「勉強会」という学習方法
b. 設計された学習プロセス
#### a. 「勉強会」という学習方法
参加者からのフィードバックにもある通り、勉強会という方法をとると、進行係も参加者も身構えることなく、リラックスして学習の場に参加することができました。
進行係だった私が最も重要だと考えて意識したのは、進行係も「共に学ぶ」という姿勢で学習の場に参加することです。
通常、聴講型のスタイルをとる学びの場は、講師が前に立って話をし、学習者が受動的に聴いてメモをとるというのが一般的です。他方、今回は「勉強会」としての進行方法をとったことにより、進行係が前に立って話すのではなく、参加者と同じようにテーブルに座って学ぶという形をとりました。といリブという教材の性質からも、私が行ったのはビデオの再生のみでした。
このことにより、参加者から「親近感が感じられ、進行係だと感じなかった」というフィードバックを得ることにつながったのではないかと考えています。
これまでtoiee Labは「ワークショップ」を開催し、学習を促進する介入を行うという、高度な技術を身につけた学習ファシリテーターがワークショップの進行を行ってきました。緻密に設計された学習プロセスと、学習ファシリテーションという知識・技術によって、学習者中心の学びを実現してきました。
今回、学習ファシリテーションも行わず探求型学習を行うことができたことは、特筆に価すると考えます。
これまでのtoiee Labのワークショップでは、ワークショップにもよりますが、高度なファシリテーション技術を要求されました。しかし、といリブを用いた勉強会により、学習ファシリテーターがいなくても効果的な学習の場を実現することができたからです。
なお、学習ファシリテーターがいることでさらに高い学習効果を得られることは、これまでの講座で実証済みです。例えば、全くHTMLを知らない知識やスキルがない状態の参加者が、3時間でBootstrapというフレームワークを使いこなして、Webサイトをデザインすることができるようになったことや、動画を撮影、iMovieで編集したことが全くない人が、3時間後にはiMovieを使いこなして動画を作成することができるようになったことなどからも言えます。
#### b. 学習プロセスが設計されている
もうひとつの大きな要因は、学習プロセスが設計されていることにあります。
学習プロセスはtoiee Labの亀田が独自に体系立てたFILM理論をもとに設計しています。学習プロセスが緻密に設計されており、本質を学ぶことができるように設計されています。
たとえば、写真でいえば、「構図の原則」や、「奥行き、光、色」「テーマをもって撮影する」というワークが設計(現時点で)最適な順番で設計されています。
さらに、「知識を与える」のではなく、**プロセスを設計**しているため何度参加しても発見のある学習体験が可能となりました。
写真勉強会に参加した私は、上で述べた通り、写真経験者ではありましたが、他の参加者の発表を聞いて気づきを得て、後日写真を撮影する機会にさらに上達することができました。つまり、経験者が学んでも大きな学びを得ることができたのです。
同様の効果は、成果をあげる習慣勉強会においても見られました。toiee Lab社員は、これまでワークショップなどで成果をあげる習慣を受講したことがありますが、ピーター・ドラッカーの「経営者の条件」を読んだことのない参加者も、「理解できそうなものに思えた。読んでみたい(後日実際に読んでいた)」という感想を話し、後日実際に8つの習慣を取り入れ、仕事の仕方を改善していました。
### 6. 共有すべきルール
以上のことから、高度な専門知識や学習ファシリテーションの能力がなくても参加者にとって高い満足感を得ることができたことがわかります。
さらに、初学者にとってだけでなく、経験者にとっても学びがあり、むしろ初学者と経験者が共に学ぶことで、互いに気づきや発見を得ることができることが、写真勉強会を通して明らかになりました。
しかしながら、toiee Lab社員で勉強会を行なったことによる影響が全くなかったわけではありません。toiee Lab社員は、ワークショップを受ける上で欠かすことのできない、共有すべきルールをすでに暗黙の前提として共有していたと言えます。
それは、**「否定をするのではなく、建設的に議論し、他者理解、受容する」**ということです。
このルールが共有できていない場合、学習に適した条件は整わず、学習以前のところでチャレンジできない、実験的に探求してみない、チーム学習であるのにチームとして機能しないといったことになる可能性があります。
勉強会を進める中で、全員がルールを理解できるようにしようと思うと、ビデオを再生して学ぶことに比べ、介入が必要になる可能性があるため、高度な技術を要求される可能性があります。
あるいは、自らが良き学習者としてのマインドセットを身につけ、共に学ぶことでルールを共有する必要があります。