ファシリテーション・レジュメ

スクラム卒業式に思うこと

今日、8ヶ月にわたって取り組んできたプログラミングをテーマにしてきた「スクラム・ラーニング(チーム学習の方法)」が終了しました。

そのオンライン卒業式に参加し、決意を新たにしました。

  1. 学ぶこと自体を楽しむことを、多くの人に思い出してもらう
  2. 学ぶこと自体を楽しむ、コミュニティを世界中に広げる

プロデビューするほどの成長

卒業式では、参加者の方々が「自分が学んだもの」「成果」「そのプロセス」「感想」を発表しました。

ある方は、WordPressを使ったことすらなかったのに、HTML・CSS・CSSフレームワーク、簡単なJavascriptを使って、アニメーションを実現したWebサイトを作れるようになりました。

また、WordPressのビルダープラグインを探求し、使いこなせるようになって、その力で製作代行を受けるまでになりました。

誇らしく思うことは、「この方が製作代行で使っている知識、技術、道具は、ほとんど教えていない」 ということです。参加者の方が「基本的な知識、ものの見方、学び方」を知って、自立して学ぶことで、体得しました。

私たちは、 「教えられていないことを、自分で学ぶことができる」 ことこそ、教育だと考えています。

手取り足取り教えることで、お互いに一時的な満足感を得ることはできます。良くしてもらった、あるいは「すぐに感謝され、頼りにされて、嬉しい」という気持ちになります。

しかし、長期的に見れば「手取り足取り教えると、技術の変化や、仕事を通じて新しい知識を、どんどん吸収する」ことができなくなります。

だからこそ、私たちは「自分で探求するための基本的な知識、学び方、姿勢」を提供すること、チームで励まし合いながら、その先を探求するコミュニティ(オンラインチャット(Slack)、自習室、お茶会)を提供してきました。

それが、目に見える成果として現れたことに、とても嬉しく思っています。

同様に、何人もの方々が「プロデビュー」したり、「キャリアチェンジ」したり、自信を持てたりしています。

全員がプロデビューではない

先に書いたように「プロデビュー」や「キャリアチェンジ」できた方がいる一方で、忙しくて2週間に1回しか参加できず、思うほど進まなかった方もいらっしゃいます。

また、ITに対して苦手意識が強く「教えられること」「まる覚えすること」「闇雲にさわって、体で覚えること」という悪習慣(?)から、なかなか脱出できなかった方もいました。

それでも、私たちが把握している限りでは、すべての人が、それぞれの前進をしたと思っています。

例えば、ある人は、高すぎる目標で挫折し、結果を求め過ぎて、学ぶこと(遠回りに感じるような探求)ができず、足踏み状態でした。

しかし、他の参加者の学び方や、学ぶことを楽しんでいる様子から刺激をうけ、「わからない自分、焦っている自分」をみつめ、受けいれ、楽しむことをスタートさせた人もいます。

つまり、私たちの教育は「ここまで、無理矢理にでも到達させます。スパルタです。成功させます。成功を約束します」というものではありません。

一方で、成功は約束できないけれども、人は必ず成長できると思っています。そして、成長が少しであっても、チームで学べば、他人の成長を祝福することで、他者に貢献することができます。

他者の成長、成功を ** 自分と比較しないこと** ができるようになれば、自然に「共に学ぶ友の成長、成功が自分のことのように嬉しい」と感じます。

私たちの教育のゴールは3つです。

  1. 教えられていないことを、自立して学べるようになること
  2. 他者と比較せず、自分の成長にフォーカスできるようになること
  3. 他者の成長、成功を自分のことのように嬉しく思える、そんな仲間と出会うこと

なお、ファシリテーターの仕事は、この3つを実現するために、学びの場を生み出すプロセスを設計、工夫することです。

成功は約束されない、しかし成長は約束できる、チームなら最低でも幸せを感じる

我が子の成長や、スクラムの参加者の様子を観察するたびに、思うことがあります。

人の成長や発達は、多種多様です。型に押し込めて、無理矢理起こすことはできません。それぞれの全く違う目的、価値観、これまでの経験、学習環境があります。どんなことがきっかけになって、意識の階段を登れるようになるかは、制御できません。

教育者ができることは、発達、進化、成長が起こりやすい土壌、場、多様性を維持することです。いくつかの基本的な条件は欠かせません(先の他者と比較しないことなど)。

しかし、それら条件を揃えたら、あとは「楽しむだけ」です。参加者同士がお互いの話に耳を傾けられるよう手伝うことです。

そうすることで、

と思っています。そうこうしていると、準備ができたら、「ポン」と先に進めます。

学ぶことは終わらない、今の結果に拘らない

知識社会かつ長寿社会に生きる私たちは、一生学び続ける必要があります。知識社会で成果をあげるには、知識が鍵です。その知識は常に進化、変化、破棄されます。

今回、プロデビューした方も、今の知識だけでずっと仕事できるわけではありません。今の知識の延長上(例えば、WordPressやHTML、CSS)をずっと歩むことで、人生が安泰とはなりません。

あと10年したら、AIの進化によって「アプリが進化」し(微調整レベルの支援、最適化などでしょう)たとき、構想力やUI、UXによって「感情をデザインする」ことが需要になるかもしれません。

そうなれば、心理学やユーザーインターフェイス工学について学ぶ必要があるかもしれません。

また、知識労働の常ですが、どうしても「飽きる」ことが起こります。どうしても、次の挑戦がしたくなってくるものです。

つまり、ずっと学び続ける必要があるだけでなく、まったく違う分野を「ゼロ」から学び直すことになります。

この8ヶ月の最大の成果は、具体的な知識や技術の習得ではないと思っています。

共に学び続けること、学ぶこと自体を楽しむことを共有している仲間と出会い、この先も学べる状態になることだと思っています。

今回の卒業式の時点では、「華々しい結果を得られた人も、目立った成果が得られなかった人」もいます。でも、どちらの方も、今はただの通過点です。

それぞれの成長のタイミングや、経路は違います。卒業後、継続するコミュニティで飛躍的な成長をするかもしれません。

だから、今日のこの日は「通過点」であり、長期的な振り返りの1日だったと思っていただければ嬉しいです。

世界中に広げたい、学ぶことを楽しむ輪を

今回のスクラムを通じて、私たちもたくさんの学びを得ました。学習理論をオフラインではなく、「オンライン」に応用する方法を、参加者の方々と模索しました。

オンライン・チーム学習教材は、3時間のものから90分に変わりました。中身も、オンラインで実現しやすいものに変わりました。

さらに、オンライン・チーム学習教材2.0 と言える新バージョンにも到達しました。新バージョンでは、より深い学びを得られるようなプロセス設計を行うようになりました。さらに、長期的なメタ探求型学習を支援する仕組みも、盛り込めるようになりました。

そしてなによりも、

の価値を改めて体感しました。

toiee Lab 始まって以来、はじめて納得いくもの

toiee Labが始まって以来、ずっと

これらに対して、妥協するのではなく「一挙両得」のような解決ができるイノベーションを探し続けてきました。

オフラインの短時間、長時間、3日間の集中講座から始まり、おもしろ動画による教材と、短いトレーニング、そこからオンラインワークショップに進み、3時間バージョン、90分バージョン、オンラインお茶会、オンライン自習室、コミュニティツールの活用など、多くのことを行ってきました。

そしてやっと、納得いくもの、今の時代にぴったりで、世界中に広がって欲しいと願うものができたと感じています。

奇しくもスターバックスで書いています

卒業式は、母校の大学の構内にあるスターバックスで参加しました。

スターバックスのスタートは、創業者のハワード・シュルツさんが、イタリアのカフェを巡り、感動し、

「こんな体験を、アメリカに広げたい!」

と思ったことからスタートしました。そして、良い体験を提供するためには、共に働く従業員(パートナー)にも、最高の体験、環境を提供したい。お客様、パートナー、関わる人、周りの人が幸せになるビジネスをしたい!と願ったことからスタートし、世界中に店舗があります。

スターバックス(しかも母校)で、オンライン卒業式に出て、「これこそが、心から広げたいと思うものだ!」という体験し、確信しました。

新しい大学、学校のような「ラーニングコミュニティ」を広げたい、もっとオープンなものにしたい、多くの人が関われるようにしたいと、改めて思いました。

まずは、共に学びましょう

今後、新しくなったスクラムや、ミニスクラム、イベントをパートナーと共に行っていきます。

機会がありましたら、是非、扉を叩いてみてください。

きっと、想像もしていなかった未来に、共にたどり着けると思います。

卒業式に寄せて。
2019年8月31日

チームtoiee Labのパートナーの一人として
亀田学広