5. 現代教育への要求と課題
人類は、年々、全員賢くなっている
現在、脳科学ブームは、まだ続いています。様々な研究が行われていますが、その歴史を見れば「明らかなこと」があります。
それは、「人類は、年々、全員賢くなっている」ということです。
ある研究では、ずっとIQが上がり続けていることが明らかになっています。そこで、IQテスト自体を難しくし続けているのが現状です。
もちろん、あなたも例外ではない
あなたは、8%の消費税を暗算できますよね?
もし、200年前なら、天才の所業でした。エリート中のエリートだけが、なせる技でした。
今や、誰でも(小学生)でもできます。また「複利」という概念すら知っています。
同様に、アニメ、漫画、小説が難解になって、普通の基準が上がっているますが、理解して楽しんでいます。簡単なストーリーは先が読めすぎて、退屈にすら感じています。
つまり、難解なロジックを理解する力が上がっています。
ボキャブラリーも、30年前に比べて非常に増えている(ボキャブラリーって知ってますものね!)
高度な機器を難なく使いこなしている
生活面で振り返れば、スマホ、メール、写真の送信、共有なども、習うより慣れよで、使いこなしています。また、様々な場所が高度化されているにもかかわらず、切符の購入、ATMなどもこなしています。
つまり、大前提として「あなたは、ものすごく高度なことを学べている」ということです。
よく学べたものと、学べなかったもの
ところで、あなたには、「よく学べた経験」と「途中で挫折した経験」の事例が豊富にあると思います。
この経験を分析すれば、自ずと「学習について、重要な示唆」が得られるはずです。例えば、
- よく学べた経験をリストアップし、共通点を見つける
- 途中で挫折した経験をリストアップし、共通点を見つける
- 二つを比べて、共通点、決定的な違いなどを探る
- 実際に検証してみる
このようなシンプルな方法を使うことで「よく学べる時」を明らかにすることができます。
そして「個人差」を十分に反映できるように、シンプルかつ、原理原則になるように理論を整理します。
そうすれば「使える学習理論」が生まれます。
ところが・・・現状は簡単ではありません。
学会はケースバイケース、現場はハウツー
上記の手順を繰り返すことで、「効果的な学習理論」が生まれ、世に広がっても良さそうですが、現実は違います。
なぜでしょうか?
実は「学会(学術の世界)では、事例研究」か「重箱の隅」を突く研究が主流です。そして、教育現場は「ハウツーで育てられた教師が、同じようにハウツーで教える」という状態になっています。
事例研究の現在の状況
事例を英語ではケースと言います。研究はスタディと言います。つまり「ケーススタディー : 事例研究」です。事例研究の実態を分かりやすい「事例」で説明します。
あなたが、悩んでいることを専門家に相談したとします。すると、専門家は、あなたの話を聞いて、様々な過去の事例を紹介します。そして最後に決め台詞を言います。
「まぁ、ケースバイケースだから」
こんな風に言われたら、あなたはどうしますか?
重箱の隅を突く研究
一方で、重箱の隅を突くような研究も多くあります。いつかは、厳密な答えを得られるかもしれませんが、現場で働く私たちには役立ちません。
例えば、「ランダムな文字列を覚える時、3日後か4日後に復習すると、定着率が14%アップした」「ただし、3日か4日かは、統計的に優位な数字が出せない」
さて、どう応用しますか?復習は単に「3日後」にすればいいのか?といえば、そんな単純なことではないことは、中学生でも理解します
ハウツーに頼る現場
アクティブラーニングの号令のもと、現場は混乱しています。嘘のような本当の話ですが、「 先生が「アクティブに」と勘違いして、すごくテンションを上げて授業する先生」がいたりします。
さらに
- こうすれば、こうなる
- ああすれば、こうなる
というハウツーを読んできて、授業をする先生たちも少なからずいます。教師本人が「アクティブ(能動的)に、ラーニング(学習)」していないのに、どうやって子供に「アクティブラーニング」をさせるのでしょうか?
言語よりも、非言語、先生のあり方、模範を見て、子供達は真似をします。
知識のアップデートに耐えられない現場
さらに、教える内容が、どんどん高度化しています。例えば、そろそろ、理科は、電子を粒として教えるのではなく、量子論的に捉えるように教える必要があるかもしれません。
さて、ハウツーで理解してきた先生達は、どうやって自力で量子論的解釈を理解するのでしょうか?
もし、誰かに学び方を教えてもらってしか教育ができないとしたら、教科書がアップデートされたら、教えられません。
そこで、「盲目的に、やり方を教えるしかない」のが現状です。
もっと良い方法はないのでしょうか?
【まとめ : 現代教育の限界】 (1) 私たち人類は、年々IQが上がり続けている (2) 経験的に「よく学べた時」「学べなかった時」を知っているが・・・ (3) 良い教育理論がない、理由は「学術にこだわっている」こと (4) 現場は、ハウツーが広がり限界になっている (5) 現代の教育システムは、知識のアップデートに耐えられないし、学ぶ力を奪う