ファシリテーション・レジュメ

同じ教材を使って成績が上がる子と上がらない子の違い

塾講師 LFT佐藤さんの声

ドリルで同じ正解率でも定期テストで成績の良い子と悪い子が出る不思議

私は小中学生向けの個別指導塾を経営しており、英数国のパソコン教材を利用しています。

この教材を使うことに決めたのは、一つの単元がごく狭い範囲に限られており、一つ一つ段階を踏んで学習しやすく出来ていると考えたからです。

例えば、正負の数の計算で言えば、最初の単元ではプラスの整数同士とマイナス整数同士の足し算の学習を、次の単元ではプラスの整数とマイナスの整数の足し算を、その次は小数や分数のたし算を、といった具合です。

また教師用の画面では生徒が解いた確認ドリルの正解率も分かるため、一定の正解率をとるまでは次の単元に進まず、一段階毎にしっかりと身につけてから進ませるようにしていました。

初めは早い遅いはあっても、一つずつ確実に身につけていけば成績は上がっていくだろうと考えていました。

しかし、実際には教材の確認ドリルでは同じような点数を取っていても、学校のテストでは点数の良い子と悪い子が出てきました。

もちろん塾の教材以外での勉強量の差ということもあるでしょうが、不思議なのは塾の教材の確認ドリルで満点を取っていても、その範囲の学校のテストでは半分もできないという子が出てくることです。

これは私の塾に限ったことではなく、同じ教材を使っている他の塾の先生からも同じような話をよく聞くのです。

テストの点数の差は何が原因か?

そこで問題を解いている横で、どのように解いているのかを質問しながら様子を見ていきました。

するとテストの点数の良い子と悪い子の違いが分かってきました。

点数の悪い子は内容をきちんと理解せずに丸暗記で問題を解いている一方、点数の良い子は自分なりに問題の解き方を理解してルール化していっているのです。

例えば、点数が悪い子は「This is a book.」を「これは本です」という日本語だと覚えると、「Thisの次にはisがくる」ということだけを覚えます。すると「この本は私のものです」を「This is book mine.」というように答えるのです。その後、答えを正解を確認するのですが、何度も同じような間違いを繰り返します。

しかし点数の良い子は何度か間違えても、なぜ自分が間違えたのかを考え、自分なりに文法を整理していきます。例えば「『これは本です。』のときは『これは』が主語だったけれど、『この本は私のものです』の時は主語は『この本は』だから、主語は『This book』になって、その後に『is』が入るのが正しいんじゃないの?」というようにです。

「頭の良さ」は「技術」で決まる

以前はこういう違いが「頭の良し悪し」であり、この良し悪しは生まれつきで決まってくると思っていました。だからあまり頭が良くない子は時間を掛けて徹底的に繰り返し学習をする必要があると考えていました。

しかしLFTの講座を受講してから考えが変わってきました。

この成績の悪い子と良い子の差は生まれつきのものではなく、「学び方」という技術を身につけているかどうかという差であると考えるようになりました。

以前はとにかく丁寧に一つ一つ手順を追って解き方を教えるように意識していました。しかしLFTの講座受講後は、まずは生徒に自分がどこを、どうして間違えたのかを正解と見比べるように声がけをしています。

「どこが違ってた?」 「どうして間違ったと思う?」 「どこを気をつけたら次は正解できると思う?」

直接教えなくても、質問をしていくことで生徒自身が自分の考えを修正し、正解に近づけるようになってきています。

正直、「さっさと正解を教えて先に進めたい」という衝動に駆られることもあります。しかし正解を教えたときの「ふ~ん、そうなんだぁ」といった生徒の素っ気ない表情と、自分で正解を見つけたときの「なるほど、こうすれば解けるんだ!」という生徒の喜びと自信に溢れた表情を見比べると時間を掛けても生徒自身に正解を見つけさせるような指導をしなくてはと思っています。