沿革
toiee Labの歴史
2018/3/30
3つのきっかけ
toiee Labのルーツは、所長亀田が学生時代に経験した「3つのきっかけ」に遡ります。
人工知能を生み出す「人間の発想力」に興味を持つ
15年前、亀田は、AIの研究(現在の人工知能系とは別の人工知能の研究も含む)を行っていました。
研究を行う中で、人間や生物が現在の人工知能系とは異なる「少ないルール」で知的な振る舞いをする不思議さを知りましたが、亀田が何より興味を持ったものは、その不思議さを発見し、コンピュータ計算に応用する人間の発想力でした。
研究室の半年が、大学の2年以上
亀田は、大学が合わずほとんどの授業を欠席し、成績は秀優良可の「可」がほとんどの状態でした。
しかし研究室に所属して転機が訪れます。
研究室に所属して半年で方向性が見つかり、本格的に研究を始めた亀田は、研究を続ける中で、プログラミング、コンピュータサイエンス、人工知能系の知識を次々と手に入れたのです。
それだけでなく、大学院博士過程に進学する頃には、博士号を取得するに必要な論文数を満たしていました。
この経験から亀田は、現代の教育と、研究室で学ぶことに大きな隔たりがあることに興味が湧きました。
後輩も、同じ結果に
亀田に起こったことが、亀田が指導する後輩たちにも起こりました。
研究室に入ってくる学生は、プログラミング、その他の科目で優秀な成績を修めてはいました。しかし、プログラミングで何かを実際に作る、論文を書く、議論する、といったことはできませんでした。
研究室に入る以前に彼らが理解したと思っていた知識は、単に憶えただけの知識だったのです。
ところが、1年の議論、研究によって、後輩たちは見違えるような理解を得ることができました。
亀田は、この成果を目の当たりにし、「『研究』というアプローチのいくつかの要素を、教育に活かすことができれば、大きな飛躍があるのではないか?」という仮説を立てました。
ここまでをまとめると、
- 研究を進める中で、AIとは異なる「人間の発想力」に興味を持つ
- 現代の教育と、研究室で学ぶことに大きな隔たりがあることを観測する
- 研究室の後輩達を指導する中で、その成長を目の当たりにし、「『研究』というアプローチのいくつかの要素を、通常の教育に活かせることができれば、大きな飛躍があるのではないか?」という知見を得る
大学近くのカフェから始まりました
亀田は、博士号取得後に研究員を経て、大学には残らず、ソフトウェア会社を起業します。
会社経営をする傍ら、関西大学政策創造学部(データ分析)、関西大学総合情報学部(起業論)、関西大学工学部(プログラミング)で講師を行う(2018年現在は、政策創造学部のみ)中で、学生たちから、「変わった先生」として、質問を多く受けることになります。
そこで亀田は、放課後にカフェで雑談をする機会を設けることにしました。
雑談の内容は、「問い」を中心として読書会や、ディスカッションです。亀田の専門でない分野も、教科書を持ち込んで「問い」を中心に対話することで、学生たちは
- 授業が面白くなる
- 理解が非常に深くなる
- 様々な知識が繋がり合う
という経験をしました。
カフェの仲間が集まって、toiee Lab を結成
知的好奇心、問うこと、探求することが面白いという学生と、亀田は「新しい教育」のために何かしようと toiee Lab (問いから研究を始める)を結成します。
学ぶコミュニティ形成のための研究
toiee Labを結成してはじめに起こったのは、学ぶコミュニティ形成のための研究です。
様々な研究や、海外のワークショップに参加し、学びの「オンライン化」が進むなかで、人が「実際に集まって、共に学ぶこと、お互いに刺激し合う学び」を探求し続けました。
そして、「全国(世界中に)学ぶ場を作れないか」と考え、「といてら」プロジェクトを開始します。
学習理論の確立
「といてら」で、様々な「学び」を提供するために教材作成、ワークショップ設計を手がけました。
しかし、亀田は、有効な学習モデル、理論がないことを知ります。
あるものは複雑すぎたり、あるものは方針だけだったり、あるものは「良い教育の定義」でした。どれも重要ですが、「さまざまな分野の教育を、安定して生み出す」には、曖昧すぎる、あるいは応用がきかないものでした。
そこで、亀田の専門領域であったAIやシステム論の観点から学習を定義することを始めました。
その結果、シンプルで応用しやすい学習理論「FILM2理論」を定式化しました。(現在も改良は続く)
FILM2学習理論とは
toiee Labで採用する学習理論では、人の学習(ここでの学習とは、学校の授業を受けることや勉強ではなく、生物の機能としての学習(Learning)を指します)を、システム論から定義します。
さらに、学習を「多段のフィードバック制御」による自己組織化現象と、トップダウンの教師あり学習のハイブリッド構造として捉えます。
このシンプルなモデル一つで
- 学習状態を明確に定義
- 学習プロセス設計
- ファシリテーション
を統合的に説明、設計、実行できるようにしました。
研究と実践
toiee Lab は、在野の研究所として自由に研究を行っています。
また、伊藤穰一氏の提唱する研究所の役割「Deploy or Die」を信条としており、学習理論を提唱するだけでなく、実際に役立つものを作って、広げて、さらに活動の範囲を広げることを実行しています。すなわち企業活動を行っています。
toiee Labが企業活動を行う3つの理由があります。
- 独立採算(自分たちで収益を上げること)によって、縛られずに、新しい分野に挑戦することができる
- 研究のための研究、専門家だけの知識に偏ってしまわず、「使える」「役立てられることができる」研究を続けるインセンティブが働く
- 最も重要だが、「自らも現場(受講者)から学ぶこと」ができる。学習理論を作っているわけではなく、人を教育する立場であるには、模範になることが大切だと考えている
以上のことから、私たちは企業活動としての研究所を行っています。
現在のサービス概要
学習理論を学べるワークショップや、教材(教員、講師、経営者、マネジメント層向け)を開発しています。
加えて、以下の活動を行っています。
- 具体的な何かを学びたい人向けに、開発したワークショップを開講
- 教員、講師向けに具体的なワークショップを開くための講座資料、ノウハウの提供
- その他、学習理論を学べる書籍の執筆、大学との共同研究