あなたはハトですか?人間ですか?
人間らしい学び方をしよう
こんにちは。
toiee 亀田です。
足掛け10年(集中したのは、この2年)、やっと学習理論が完成しました。しかも、講座設計にまで応用できるシンプルで、強力なモデルが出来上がりました。
FILM 学習理論 モデル図
いよいよ、広げていきます。きっと
- 子育て
- 学校教育
- 障害者支援(実際に、知的障害者支援の先生がたにも、toiee Labのワークショップを受講していただいています)
- 社内教育
- 発展途上国支援
に、貢献できると思っています。
今日は「FILM理論」を応用した「ソフトウェアの学び方」を紹介します。
やり方 vs 学び方
高校の情報(パソコンや、情報理論)や、大学のコンピュータ実習、オンライン講座、パソコン教室など、ほとんどの教室では
高校の情報(パソコンや、情報理論)や、大学のコンピュータ実習、オンライン講座、パソコン教室など、ほとんどの教室では
- やり方 を教えています
例えば、「AAA がしたいなら」
- B というボタンを探して、
- クリックして、
- C が現れるから、クリックして
- 次にD
と説明します。丁寧に、図解したり、動画で見せたりします。そして、そのような動画を何十種類と作って見せます。
そして学習者は、言われた通り、従順に
- 作業を繰り返して、覚える
ということをします。
ハトの訓練と同じです
ハトも適度に報酬(餌)を与えることで、複雑な手順や条件分岐がある手順も、繰り返しによって、できるようになります。
もちろん、膨大な繰り返しを必要としますが、驚くようなことをやってのけます。
ハトと人間の大きな違い
では、ハトにできることは、「人間はもっとうまくできるか?」というと、意外にもハト以下です。
人間は、ハトにやるような訓練をさせられると、すぐに退屈します。創造性を失い、失敗する確率や、短絡的な行動を起こして、失敗します。
人間は、ハト以下なのでしょうか?
どう考えても、ハトより知性があります。つまり、退屈したり、失敗が増えることは「自然なこと」と考えれば、納得がいきます。
つまり、「人間には、このような繰り返し訓練」が、あまりフィットしないということを示しています。
ハトではなく、人間らしいアプローチをしよう
学び方を学ぶというアプローチ
人間は、無駄に脳が発達しています。特に前頭前野の発達によって、感情、条件反射に介入し、書換えることができます。(ちょっと話が難しいですね)
別の例を出しましょう。
琵琶湖には、伝統漁法があります。その漁法は、湖に図に示すような「網」を配置するだけのシンプルな方法です。このように網を配置すると、魚が矢印の形のところに集まり、右往左往します。
えり漁法の仕組み
それを、すくって採るというシンプルな漁法です。
なぜ、この方法で魚が取れるのか?
理由は簡単です。魚は「障害物に当たると、沖に向かう」性質があります。そこで、多くの魚は、沖に向かい、矢印の形のところに止まります。
では、この魚の行動は、いつ獲得されたのでしょうか?
- 親から教えられた?
- 魚人生の中で、発見した?
- 友達がやっているのを見て学んだ?
もちろん、全部違います。御察しの通り、「遺伝的に獲得した」のです。つまり、浅瀬に向かった魚は、死ぬ確率が上がります。その結果、子孫を残せません。
一方で、沖に向かう魚は、生存率がアップします。そして、子孫を残します。魚は、文化を持たないので「遺伝子的に、沖に進みやすいもの」が多く残り、それらの行動が種の間に広がります。
多くの生物は、「遺伝という長いプロセス」を通じて、行動の調整を行っています。この考えは、ダーウィニズム(遺伝子のみ)でも、形質による遺伝を主張するラマルク派でも、同じです。
どちらにせよ「遺伝」を通じないと行動調整、つまり「学習が起こらない」ということです。
人間は、1世代で「行動調整」をする
メタルモデルの変更という仕組み
一方で、人間は違います。
遺伝で獲得した行動を調整することができます。分かりやすい例で考えれば、喜んでジェットコースターに乗ったり、バンジージャンプする人間がいます(私もやったことがありますが)。
私たちは、遺伝的には「絶対にできなさそう」なことも、やってのけます。
これは「シミュレーションによって、次を予想している」からです。しかも、遺伝によって獲得したシミュレーションではなく、後天的に獲得したもので、すごく柔軟に組み替えることができます。
ここまで書いて、なんだか話が難しくなってきました。難しい話はいらない!という方は、ザーーッとしたに飛ばして、5つのステップをお読みください
様々な研究結果を照らし合わせると、
- 人特有の「シミュレーションの修正」を最大限に利用した「学習」
は、「楽しい!」と感じます。
学習の世界では、このシミュレーション自体を修正するものは、高次学習と呼ばれています。簡単に言えば、「すっごくよく学べている状態」「高度な学びを行えている状態」を指します。
メンタルモデルとも呼ばれています
このシミュレーションをするための脳の構造を「メンタルモデル」や「ヒューリスティクス」と呼んだりします。つまり、頭の中で
- 次、こうしたら、こうなる
- もし、こうやったら、こうなる
ということをグルグル回せる「仕組み」をメンタルモデルといます。難しい用語はさておき、誰でもこのメンタルモデルを使いこなし、修正しながら生活をしています。
先日、あるセミナー会場で、講義をしていました。ホワイトボード消しゴムが用意されていて、それを手に取ると、マグネットが付いていました。
即座に、頭の中でシミュレーションしました(無自覚に)。
- マグネットがある
- 今までの経験から、これは張り付く
- 書いている最中は、貼り付けよう
そう判断して、ホワイトボードに貼り付けたものの、ボトっと落ちました。私は、講義を続けながら、ホワイトボード消しゴムを拾い、もう一度貼り付けようとしました。
ところが、貼り着きません。場所を変えたりしながら、
- 「あぁ、なるほど、ここは張り付かないんだ」
- 「貼り付けるために買った消しゴムじゃないんだ」
と気づきました。
この時、脳に起こったことは
- 予想する(シミュレーションする)
- 結果と予想を比較する
- モデルを修正
です。
ある程度、簡単な出来事なら、あまり自覚的にしなくても、すぐに調整ができます。
もし、「意識的に」このシミュレーションを行い、修正をすると・・・すごいスピードと、質で学べるだけでなく、
- 学ぶのが楽しくなります
さて、これらを「ソフトウェア」に応用すると、5つのステップになります。
ソフトウェアを学ぶ 5つのステップ
- ボタンを決め、ストップ!
- 何が起こるか予想する
- なぜ、そう思ったか?を考える
- 実際にやってみる
- 驚く
まず、どのボタンでも良いので「一つ」決めます。そして、ボタンを押す前に(これがすごく重要)、考えます。
「何が起こるだろうか?」
そして、次に
「なぜ、それが起こると思ったのか?」
を問います。
ここで重要なことは、可能な限り「詳細」になにが起こるかを考えてみることです。例えば、ウインドウが開く、開かない、ポップアップが出る、画面が切り替わるなどです。
また、理由も、「なんとなく」ではなく、前に見たことがあるとか、アイコンからこう推測できるなどなど、可能な限り考えてみましょう。
そして、これは「当てるため」やっているわけではありません。学習を引き起こすためにやっているので、正答率は、絶対に気にしてはいけません。
そして、実際に確かめてみましょう。すると「オォー、予想どおり!」となれば、その予想モデルが強化されます。しかも、意識しているので、効果的です。
さらに「あれ、予想と違った!」となった瞬間、脳はメンタルモデルを作り直します。
もちろん、一発で正しいメンタルモデルは手に入りません。このようなサイクルを、何度も、何度も繰り返します。いろんなボタンを押したり、リンクをクリックしたり、テキストをクリックしたり・・・
そうこうしていると、自然と「予想が当たりやすく」なります。
予想が当たることよりも、大切な事
メンタルモデルの修正能力が上がる
こうやって繰り返すと、「予想が的確に当たるように」なります。多くの場合、これで喜んでしまいがちですが、それではまだまだ「人間しかできない学習」ではありません。
このような繰り返しをしていると、「予想と違う事」に敏感になります。そして、メンタルモデルをすぐに修正します。
繰り返しによって「学習能力(メンタルモデルの修正能力)」が上がっていきます。また、いわゆる「ボタンを押すだけでなく、実験する力」も付いてきます。
自分で「予想外な出来事」を探すように触ったり、「メンタルモデルが正しいか?」を確認するために、あちこち触ってみるなどをします。
このような学習をしていることを、外から見れば「アクティブ(能動的)」となります。
最近はやりのアクティブラーニングとは、そんなに難しくなく、簡単で、シンプルな考えで実現できます。
さらに、意識すること
もちろん、この5つのステップだけで全てが解決するわけではありませんが、大いに役立ちます。
実際に、何らかのアプリをマスターできる講座を作るには、
- 細かい違いに意識を向ける「意識」
- 探求モード(5つのステップ)
- 抽象度の階段を上がる課題
- 前提知識、メタ知識を手に入れ、使う
というような講座設計が必要です。それでも、この5つのステップだけでも、大いにパソコン苦手を克服することができます。
おためしください。
また、周りの人で苦手な人がいたら「このステップをファシリテート(質問し、促してあげる」してみてください。効果がすぐに確認できるはずです。
追伸
先日、視覚障害の方にワークショップに参加していただき、iPhone講座を行いました。同じ5つのステップを使って、カレンダーアプリを探究したところ、あっさり使えるようになりました。
そのうち、その時のプロセスを記事にします。
視覚障害者支援をされている方をご存知の方は、是非、記事をシェアしてくださいね!